2013年12月29日

がんを引き起こす鍵となる酵素の仕組みを解明(京大)

がんを引き起こす鍵となっている酵素が働く仕組みを、京都大の岩田想教授(構造生物学)のチームが突き止め、12月1日付の英科学誌ネイチャー電子版に発表しました。

RasとRce1

細胞制御に関わる重要な分子であるRas(ラス)たんぱく質は、常に活性化(スイッチオンの状態)されるような突然変異により、高頻度でがんを引き起こすことが知られています。Rasたんぱく質の活性化には、このたんぱく質の特定の部分がRce1というたんぱく質分解酵素によって切断されることが重要です。Rasたんぱく質が突然変異を持っていても、Rce1による切断が起こらないと、Rasたんぱく質の細胞膜への移行が妨げられ、がんを引き起こす働きが抑制されることが分かっています。

- 共同発表:がんを引き起こす膜たんぱく質の立体構造と働きを解明~がんを抑制する薬剤の設計へ~(科学技術振興機構(JST)プレスリリース)
簡単に言ってしまうと、Rce1という酵素によって、Rasというたんぱく質に異常が生じ、がんが引き起こされるということですかね。

すい臓がん、子宮頸がん、肺がん、甲状腺がん、膀胱がん、乳がん、皮膚がん、白血病などのがんで、Rasの異常が関与していると考えられています。
提供:科学技術振興機構(JST)

Rce1の構造や、Rasへの作用の仕組みを解明

そこで本研究グループは、抗体を用いて膜たんぱく質の結晶化を促進する独自技術をRce1に適用しました。この抗体とRce1との複合体を作ったところ、良好な結晶を得ることができ、その立体構造を原子レベルで解明することができました。さらに、Rce1の構造中に見いだされた「くぼみ」にコンピューターシミュレーションを用いてRasたんぱく質をドッキングさせることにより、Rce1によるRas活性化の詳細な分子機構が分かりました。

今後の展開

Rce1の構造が明らかになったことで、Rce1の働きを阻害・調整する治療薬の開発が可能になることが期待されます。

参照

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