2013年6月28日

iPS細胞から造血幹細胞を作製

5月14日、東京大学医科学研究所の中内啓光教授らの研究チームが、マウスとヒトのiPS細胞から血液の基になる造血幹細胞をマウス体内で作り出すことに成功し、この方法を応用して遺伝性の血液疾患マウスの遺伝子治療にも成功したと発表しました。

「テラトーマ」という腫瘍に着目

 研究チームはiPS細胞などをマウスに移植するとできるテラトーマ(奇形腫)と呼ぶ細胞の塊に着目。免疫が働かないようにしたマウスに、人から作ったiPS細胞と、細胞増殖を促すたんぱく質などを注射すると、マウス体内にテラトーマができ、造血幹細胞が育った。幹細胞が骨髄に移動し正常に血液を作ることも確認した。

 この造血幹細胞を取り出し、放射線を当てて造血幹細胞を壊したマウスに移植すると、3カ月後に造血幹細胞が骨髄に集まり、リンパ球など全ての血液細胞を作っていた。iPS細胞から血液細胞を試験管で作る試みは多いが、きちんと働き移植に使える造血幹細胞を作るのは難しかった。

iPSから造血幹細胞 東大、白血病治療の足がかり :日本経済新聞
画像提供:科学技術振興機構(JST)

新しい遺伝子治療モデル

免疫不全症のマウスから作製したiPS細胞に遺伝子治療を施し、再び免疫不全症のマウスに注入。テラトーマ内で造血幹細胞を誘導した結果、マウスの末梢血中に治療後のiPS細胞から作られたリンパ球が検出されました。

このことから、遺伝子治療を施したiPS細胞からテラトーマ形成を利用して誘導した造血幹細胞を自家移植することによって、免疫不全症などの血液疾患を根治的に治療できる可能性が示唆されました。
画像提供:科学技術振興機構(JST)

今後の展開

血液疾患の根治的治療の可能性

遺伝子の突然変異によって正常な血液細胞が作れなくなり、免疫不全症、慢性肉芽腫症、血小板や赤血球の異常症などになることがあります。

その患者の皮膚からiPS細胞を作り、変異してしまった遺伝子を正常なものに治療。その正常化したiPS細胞から、動物の体内で誘導した造血幹細胞を取り出し、患者自身に移植することで、病気を根治的に治療するということが考えられます。

安全性の確認が必要

iPS細胞を完全に分化させないまま生体に移植すると腫瘍ができてしまうため、iPS細胞から作られた造血幹細胞が、完全に分化した細胞であるという確認が必要になります。

効率的な造血幹細胞の作製法は?

効率よくヒトの造血幹細胞を作製するために、どのような動物種が適しているのかということや、その作製技術を検討する必要があります。

当面は研究用途

上述の課題面から、当面は血液疾患の患者のiPS細胞を使って造血幹細胞を作り、病気の発症の仕組みや治療法研究に役立てる考えだそうです。

雑感

これもかなり期待しちゃいます。

最近の白血病関連のニュースは、iPS細胞が絡んでくることが多い印象があります。これまで抗がん剤でひたすら叩くか、移植で造血能をまるごと交換するかという治療が主流で、根本的に治すことが難しかった白血病ですが、今回のような研究が実を結んでくれれば、その状況が一気に好転するかもしれませんね。

いやあ、iPS細胞の可能性ってすごいですね。そりゃノーベル賞取るわ。

参照


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