2013年12月28日

慢性骨髄性白血病に関わるIRF8分子の働きを解明(横浜市立大)


今年のニュースはできるだけ今年のうちに出しておきたいところです。

11月11日、横浜市立大学の田村智彦教授らのグループが、慢性骨髄性白血病と転写因子IRF8との関連性を、樹状細胞の観点から発見したと発表しました。

背景

慢性骨髄性白血病は、「BCR-ABL融合遺伝子」という遺伝子が原因とされています。このBCR-ABLの働きを阻害する薬である「イマチニブ(商品名:グリベック)」によって、治療成績が劇的に改善しました。

しかし、薬剤耐性や内服を中止した場合の再発などの課題から、次世代の治療法が望まれています。

一方、遺伝子の発現を制御するたんぱく質であるIRF8が、樹状細胞などの免疫細胞の産生に重要な役割があることが分かっています。

このIRF8が欠損したマウスに慢性骨髄性白血病に似た状態が引き起こされることや、慢性骨髄性白血病患者でIRF8の発現が低下していることから、がんの制御に対する関連性が考えられてきました。

IRF8回復で樹状細胞回復

今回の研究では、マウスを使った解析の結果、BCR-ABLによってIRF8の発現量が低下し、樹状細胞の産生が著しく阻害されていることが分かりました。

さらに、BCR-ABLによって抑えられたIRF8の発現を元に戻すと、樹状細胞の産生が回復することが分かりました。

また、IRF8発現の回復によって産生が元に戻った樹状細胞では、BCR-ABLの働きによってその機能がむしろ高まったそうです。

成果と今後の展開

樹状細胞はがんに対する免疫において重要な働きを担っていることから、IRF8の発現の回復が慢性骨髄性白血病の新たな治療の鍵であると考えられます。

今後は、BCR-ABLによるIRF8の抑制のメカニズムを詳しく調べることで、IRF8の発現を回復させることが可能な新薬の開発へ繋がることが期待されます。

参照

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